2026年5月14日より16日の3日間の日程で神戸国際展示場において開催されました第30回 神戸国際宝飾展 ( IJK 2026 )に出展してまいりました。
昨今の世界情勢が宝飾品業界に複雑かつ多面的な影響を及ぼしています。とりわけ、地政学的リスクの高まり、インフレの進行、為替変動、資源価格の高騰は、宝飾品業界の構造そのものを変化させつつあります。新たなフェーズに入った宝飾品業界に及ぼす影響を注視し、今後の変化を考える時期にありそうです。




最近では地政学的リスクの影響が我々の業界のみならず、多くの産業に影響を及ぼし、世界経済は不確実性を増しています。投資資金が安全資産へと流入する傾向が強まり、金を中心とした貴金属価格が上昇し、金価格は過去最高水準を続けています。インフレ懸念や政治的不安により世界で安全資産としての金需要が急増しています。この結果、宝飾品の原材料コストは大幅に上昇し、製品価格の引き上げが不可避となっています。



原材料の高騰に伴い市場構造が変化しています。金価格は2025年に大きく上昇し、1グラム2万円の水準を継続し、宝飾品価格全体を押し上げています。この様なコスト増は、企業の収益を圧迫する一方で、消費者の購買行動にも変化をもたらしています。価格上昇に伴い、低価格帯商品の需要が減少し、代わりに資産価値を重視した中高価格帯の商品の需要が増加している様です。今後は需要構造の二極化も考えられそうです。




富裕層はインフレヘッジや資産保全の観点から高価格帯商品への投資を強めている一方、一般消費者は価格上昇により購買を抑制する傾向に向かっています。宝飾品需要は資産としての高価格帯と装飾品としての低価格帯に分極化しつつあります。投資としての高価格帯需要の増加は喜ばしい事ですが、原材料の高騰により一般的な宝飾品需要の減少は我々の業界に大きな打撃となっています。



原材料の高騰は多くの企業戦略に変化を与えています。原材料コストの上昇に対応するため、金地金の使用量を抑えたデザインや、代替素材の活用を進めている企業も目立つ様になりました。また、オンライン販売やリユース市場の拡大が顕著であり、宝飾品の流通構造は従来の実店舗販売から多様化しており、この流れはますます加速していきそうです。円安、輸入コスト増による企業の変化により業界が大きく変わっていきそうです。




一般的な宝飾品需要の減速傾向ではありますが、宝飾品業界は価格上昇による単価増加を背景に拡大傾向にあります。金やプラチナの地金の高騰が続く限り、宝飾品は装飾品であると同時に投資対象としての性格を強め、資産としての宝飾品という位置付けが強まりそうです。また、デジタル化の進展により消費市場は一層国際化し、競争環境が一層激化する事により市場は拡大しそうです。



若年層を中心に消費者の価値観の変化も進んでいます。新品である事が絶対であるという価値観は時代とともに薄くなってきており、むしろ、一点モノやヴィンテージ、サステナブルが評価される時代となっています。環境問題への関心の高まりもあり、リユース品を選択することが賢い消費として受け入れられ始めています。特に欧米で広がりをみせるサステナブル・ラグジュアリーの概念は今後世界中で広がりを見せるのでしょう。




消費者の価値観の変化に伴いリユース市場が急成長している事で、新品とリユースの境界線も曖昧になりつつあり、業界全体の構造そのものが変わり始めています。日本のリユース宝飾品市場は海外から非常に高い評価を受けて拡大を続けています。新品の装飾品や贅沢品としての価値観ももちろんですが、現在ではリユース品の資産性、希少性が重視される時代へと変化しています。日本のリユース宝飾品市場は世界的に需要が底堅く、アジア圏の富裕層需要は継続すると考えられており今後も成長が見込まれています。



この様な宝飾品業界の現状にて開催されました今回の神戸開催のジュエリーショーは、現状を色濃く表す雰囲気でありました。初日こそ来場者はそこそこ見られたものの、3日間で見れば例年より賑わいを欠くジュエリーショーとなりました。特に日本のバイヤーの来場者はかなり少なく、年々減少傾向にある様に思われます。小売の現場において現在の高騰した商材の価格では仕入れを新たにしても売れないのが現実の様です。




逆に、今回のジュエリーショーの前日に開催されたライブコマースのイベントは好調であった様です。出展された企業の多くで今回の状況を事前に判断しそちらに力を入れられていました。ライブコマースも行き渡った感が少し見えますが、まだまだ日本の宝飾品は需要がありそうです。実店舗よりもSNSなどでの販売の方が大きなマーケットとなりつつあり、時代の変化を感じます。



宝飾品の相場感も以前は縦に卸して、小売の現場での販売価格で変動していましたが、現在は横の業者間で取引される相場が主流となってきており、高騰した相場においても縦の相場を意識する事なく取引されています。今回のジュエリーショーを見ても各出展企業ブースに相場のプロが訪れ仕入れを行なっており、業者間取引きでの売り上げが大きい出展企業が多かった様に思われます。




今回のジュエリーショーに出展し、宝飾品業界は形を変え新たなフェーズに入ったのだと実感しました。以前までの常識が通用しない現状、そして更なる変化を続ける未来に対応しなければならない状況となりました。今後も皆様に出展ブースに足を運んで頂ける様努力してまいります。今回お越し頂きました皆様、ありがとうございました。心より御礼申し上げます。また次回ジュエリーショーにおきましてお会いしましょう。















