Hong Kong Jewellery & Gem Fair September 2018

期間
2018/09/14〜2018/09/18
会場
香港コンベンション & エキシビションセンター
ブース
3F502
展示会情報

 

 2018年9月14日から18日の5日間の日程で、Hong Kong Convention & Exhibition Centreにおいて開催されました HONG KONG JEWELLERY & GEM FAIR SEPTEMBER 2018に出展して参りました。

 現在の我々の業界は大きな過渡期を迎え、産業構造の変化が如実に現れる状況となっています。ハード面ではECの拡大により実店舗の売り上げが落ちており、今後この流れは加速して行くと考えられています。我々の業界の取り扱う製品商材は大きく分けて企画製造し量産できる製品と個性的でオリジナリティー溢れる一品物の製品に分類出来ると考えられます。我々の業界の製品商材の割合は企画製造されたものが多く、この分野の商材は今後ますます厳しい状況になる事が予想されます。これだけ情報がオープンになり、簡単にアクセス出来る様になると最終的には価格の勝負となります。

 最近の製造メーカーの一部では、これらの商材を縦に卸すことを辞め、ECでの販売を行っています。人気ブロガーの様なサイバー空間で大きな影響力を持つインフルエンサーを探して来て、スマートフォンで撮影した商材の画像や動画を彼らに拡散して貰うと言うスタイルで、その宣伝効果は大きくかなりの人気を集め、実績をつくっています。通常の卸事業や、先日開催されたJJFの場においてもこの流れが色濃く出ており、商材の提供者と消費者の関係がスマホセントリックになって来ており、今後もスマートフォンを駆使した新しい変化が考えられます。

 ソフト面では投資先としての金の魅力が薄れ、触媒としてのプラチナの需要が下がり、両地金の相場が下がり我々の業界に影響を与えていますが、ここにきてもう1つ今後の変化が起こりそうな問題が浮上しています。ダイヤモンドの問題です。これまでHPHTやCVDなどの合成ダイヤモンドの登場でダイヤモンドのマーケットは疑心暗鬼となり、相場が下落していましたが、ここに来て今度はデビアスより「ラボグロウンダイヤモンド」が今秋よりマーケットに流通される事が発表されました。このダイヤモンドは天然ダイヤモンドと同じ様に国際的鑑定機関であるGIAによる鑑定書が発行されるようです。

 このラボグロウンダイヤモンドは純粋な炭素から養殖し天然と品質が変わらない上に、レッドやブルーといった天然ではかなりの希少な色まで製造可能だと言う事です。天然と変らぬ品質を持ち、価格が安価なラボグロウンダイヤモンドの登場はダイヤモンドマーケットに変革をもたらす事は必至なのでしょう。

 今回の香港で開催されたジュエリーショーはと言うと、例年よりも少ない来場者の雰囲気であった様に思われました。9月の香港でのジュエリーショーはアジアでもNo.1の規模を誇り、例年は非常に賑わいがあるのですが、今年はそうはなりませんでした。米中間貿易摩擦や人民元安で中国の景気が落ちている様で、いつもなら元気な中国バイヤーの方々も控え目で仕入れを躊躇していらした様に思われました。以前に仕入れた商材が思う様に売れず、余程安いか在庫にない商材でないと購入される雰囲気ではありませんでした。

 ムードが悪くなったもう1つの原因は、最近更に拡大を見せるECの影響がある様で、実店舗をお持ちの方々はユーザーの方々が簡単にネットで商材の情報や価格を調べる事が出来たり、EC上でかなり安く販売される事がある様で、今までの様に簡単に販売出来ず、価格競争を余儀なくされる事が多く、利益を確保する事が難しくなって来ていると仰っていました。この事で商材の仕入れにもかなり厳しくなっておられた様に思われました。

 アマゾンを筆頭にECの拡大により流れは大きく変わり、消滅した産業も多く見られ始めました。我々の産業構造もこの流れにより変化は必至の状況となって来ています。我々の業界では殆どが実店舗で商材を販売して来ましたが、大規模な店舗を構え、品揃えが充実しているだけでは生き残る事は出来なくなってきています。しかし、実店舗が無くなる事はないのでしょう。その証拠にEC企業の実店舗の進出が相次いでいます。

 しかし、その形は旧態依然のものではなく、アマゾンではソフトウェアが店舗運営のかなりの部分をカバーし、レジのない店舗のアマゾン・ゴーで出店し、D2Cで成長してきたEC企業もショールーム形式の店舗で出店し、ECで販売している商材を手にとって実際に試し、気に入れば店内のPCか顧客が自分でネット注文するショールーミングと言う新しいトレンドを生み出しています。これらの様に今後EC企業が新しい形で実店舗に進出してくる事が予想されます。今後実店舗を主戦場にしてきた企業が生き残るためには、ショッピング・エクスペリエンスと呼ばれるアップル、スターバックス、ナイキなどが行なっている顧客が進んで実店舗に足を運び、実店舗でしか出来ない体験をする購買体験にヒントがあるのかもしれません。実店舗、現物の商材が無いとEC自体も成り立たちません。今後共存またはECを超える店舗作りが課題となりそうです。

 今回は景況感の悪さに加え、ジュエリーショー期間中の16日に香港は大型台風に見舞われ休会となり、多くのバイヤーの方々は早々に帰られる形となりました。地元香港の方々も台風によりとてもジュエリーを購入する気分にはなられなかった様に思われました。これから年末に向け、今回のジュエリーショーの影響は我々の業界の様々な部分に出ると思われます。我々ももう一度気を引き締め直し、今後に取り組んで参りたいと考えております。今回本当に大変な状況下にも関わらずお越し頂きました皆様、本当にありがとうございました。また、今回の台風で被害に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げます。