2019年11月28日から12月1日の4日間の日程で、Hong Kong Convention & Exhibition Centre Hall 1 & 3FGにおいて開催されました JMA Hong Kong International Jewellery Show 2019に出展して参りました。
グローバル主義の理想は東西冷戦の象徴であったベルリンの壁崩壊より30年の時を経て色褪せ、所得格差、保護主義、米中摩擦により新たな壁に突き当たり、世界は分断の時代へと後戻りをしています。貿易面でも米中ともに高関税を掛け合い貿易量が減少し、その影響を受けて他の国々の貿易にも大きな影響を及ぼしています。またアメリカ企業はIT企業を筆頭に中国での事業の縮小に動いており、中国企業もIT企業を筆頭にアメリカで同様の動きを見せています。
グローバル時代においては国境と体制の壁を取り払いヒト・モノ・カネが自由に行き交い、相互依存を深めた世界で各国企業は競うように国境をまたいだサプライチェーンを構築し、IT産業などの多くの新しい産業を生み出しました。しかし、現在は世界は提携もしなければ、競争もしない閉塞感漂ういびつな関係へと向かっています。この事は貿易の輸出入だけでなく、観光関連産業にも影響を与え観光客の各国の往来の減少につながっています。
また資金循環にも歪みが出てきています。家系が貯めたお金を企業が銀行から借り入れ、工場などに設備投資をし経済を拡大させるというこれまでの構図が崩れつつあります。これまで企業は借り入れで収入以上にお金を使い、事業を拡大させてきたのですが、現在の先行きの見えない世界的な景気低迷により、借金を減らし投資を控え、お金を抱え込む企業が増えています。潜在成長率が低迷している社会では相応のリターンが見込める投資機会が減ったという事なのでしょう。
この余った投資マネーは株や債券へと向かっています。株や国債の変動率が低下している事で投資マネーの流入に拍車が掛かっています。世界の株価は実体経済の状況に反し上昇し最高値に迫っています。超低金利により緩和マネーが市場の変動を抑え、それが更に資金を呼び込む好循環に入っています。しかし緩和マネーで押さえ込まれた低変動率を手掛かりにした株高は、逆回転リスクをはらんでおり楽観視するのは危険である様に思われます。
今回ジュエリーショーが開催された香港においては、警察とデモ隊の衝突が激化し回復の兆しが見えていません。中国は一国二制度に基づく高度な自治を香港に約束しながら共産党による統治を強め、力で抑え込もうとしてます。これに対しデモ隊は強く反発し、鉄道の線路や道路や商店など街を破壊する過激な行動で応戦し、香港の経済、都市機能の麻痺が進んでいます。
香港のデモの激化により日常生活への影響が深刻化しており、香港市民に脱出の動きも出てきています。香港ドルを米ドルに交換する動きや、香港の富裕層の間では他国の居住権や市民権を取得しようという動きが広まっています。海外企業も香港から拠点を移す動きが多く見られており、デモが更に長期化すれば香港の国自体が麻痺してしまいそうな状況となっています。
その様な中開催され今回のジュエリーショーは、開催前の24日に投票が行われた区議会( 地方議会 )議員選挙において、全452議席のうち民主派が8割を抑え圧勝した事により、街は少し沈静化し平和的に開催される事となりました。しかし、反中運動をみせる香港の現状においては中国からのバイヤーの数は過去に例を見ない程激減しており、初日よりかなり来場者の少ないジュエリーショーとなった様に思われます。売れ行く商材の傾向も現在の世界的な景気低迷を受け、高額帯の商材は売りが鈍く、低額の商材の売りが目立っていた様に思われます。ただ会期3日目、4日目の土日には地元香港の方々の来場が多く、後半の方が活気があった様にも思われました。少しデモが沈静化しムードが良くなった事が影響していたのか、購入意欲もまずまずの方が多かった様です。
しかし、ショー期間中も以前程の規模ではないもの場所を転々と移動する形でデモが開催されており、今後も完全に無くなる事はなさそうです。今回訪れた香港の印象は、街に人が少なく、飲食店やショップはシャッターの閉まっている店も多く、活気のない状況となっていました。なんとか現在の状況が改善され、良い新年を迎える事ができればと願うばかりです。
今回のジュエリーショーも持ちまして今年のショーは最後となりました。今年も一年間皆様に支えられ終了する事が出来ました。今年は政治的、経済的に非常に厳しい年となった様思われます。来年も試練の多い年となりそうですが、皆様と共に乗り越えられればと考えます。また来年ジュエリーショーにてお会いしましょう。今年も一年間有難うございました。