2023年9月20日より24日の5日間の日程でHong Kong Convention & Exhibition Centreにおいて開催されました Jewellery & Gem WORLD HONG KONGに出展してまいりました。
中国を始めとする世界的な不況が現実的となり、世界に波及し始めています。中国では人口増加率が減少に転じる事も影響し、成長率のトレンドが急速に低下しています。将来的な成長の期待の低下は需要の抑制を通じて供給過剰体質を生み出し、不動産価格と物価上昇率が大きく下振れており、ダブルデフレのリスクが高まっています。経済が長期低迷に陥ったバブル崩壊後の日本経済と似た経路を辿るのではないかと不安視されています。
中国の不動産大手である恒大集団が8月17日に米国で破産法の適用を申請しました。同社が保有する資産のうち6割が建設途上のオフィスビルやマンションで、負債の7割が建設事業者などに対する未払い金となっています。建設会社への支払いが滞っている事から、多くの工場がストップした状況となっています。
中国の場合マンションの購入は全額前払いが基本で、日本の様に完成後の引き渡しではなく、デベロッパーは先にキャッシュを獲得できるので、本来であれば資金繰りは容易なはずが同社は破産を申請する事となりました。経営再建を進めている最中ですが、もし同社が正式に破綻する事になれば、建設会社などに対する莫大な未払いが表面化し、今度は建設会社やその取引先など広範囲に破綻の連鎖の可能性を秘めています。
また同じタイミングで不動産大手の碧桂園も破綻の危機が報じられています。同社も資産の約半分が建設途上の物件となっており、負債の大半が建設会社への未払い金となっています。同社の場合所在地が地方を含めて中国全土に広がっており、このため同社が破綻した場合には、地方経済への影響も懸念されています。
こうした不動産不況をきっかけに企業誘致が進まず、地方政府の土地使用権売却収入は激減し、中国地方政府傘下のインフラ投資会社である融資平台の債務が膨張しています。その債務は2027年には100兆元( 約2000兆円 )に膨張する見通しとなっています。融資平台が発行する城投債は、個人や企業が投資目的で保有する銀行理財商品や信託商品、公募・私募基金のほか保険会社などが主な買い手とみられ、融資平台リスクは金融システムに飛び火しかねない状況となっています。
景気減速で企業や家計の資金需要が弱くなっており、内需低迷でデフレ懸念が強まり、銀行融資が落ち込んでる事に危機感を抱き、中国人民銀行は利下げを進めています。歴史的なインフレが峠を越えつつあり、先進国の中央銀行による急ピッチな利上げもゴールが見えてきているのかもしれません。中国のGDPが1%下がった場合、世界の成長率は0.4%、日本は0.3%下押しされると予想されています。中国経済の変調が世界景気のリスクとなってきています。
世界の工場から世界の市場へと変貌した中国は、我々の業界にも莫大な影響力を持ちます。コロナ規制が緩和された3月以降、脱コロナにより世界のマーケットが再開し、我々の業界は大いに盛り上がりを見せ、雰囲気も良く各商材も相場の高騰を繰り返していました。しかし、中国の不動産不況から始まる中国経済の先行き不安を受け状況は一気に変わってしまいました。
海外マーケットのムードは悪くなり、各商材の相場が下がり始めています。高価格帯の商材は今後の様子見の状況から相場を大きく下げています。特にダイヤモンドは合成ダイヤモンドのマーケット流入も重なり大きく相場を下げる形となっています。今回香港において開催されるジュエリーショーは対中国がメインのショーであるため、状況を不安視される形で開催されました。
閑散とした雰囲気でないものの少し寂しげな来場者数でジュエリーショーは初日が始まりました。現在の景況感からかバイヤーの目が以前にも増して厳しく、よほど品質と値段が合った商材でなければ購入までには至らず、以前の様に売れるであろうから購入しておこうと言う商談は少なかった様に思われました。売れ行く商材のポイントがかなり狭まってきています。
景気減速を受け商材の相場が下がっている現状において、上がり過ぎた相場の商材を抱える出展企業も多く、商談が成り立たないケースも多かった様です。パールや地金は高値を続けていますが、その他の多くの商材はここ数ヶ月で大きく相場を下げています。モノ不足の現状で仕入れの相場が高い中、販売の出口が不振な状況下で今後の動向は非常に判断しにくくなりました。
中国の景況感の悪さについて触れましたが、中国はデジタル化に伴い中心都市から中小都市へ経済が波及し収入格差も徐々に縮小されてきています。今後ますますデジタルインフラが中小都市に普及される事が予想され、中国および世界がこのマーケットに注目しています。デジタル世代が台頭し、消費規模が中国全土に拡大すれば、中国は更なる発展を遂げるのでしょう。
中国に依存せざるを得ない現在の我々の業界は、今後の中国の動向を注視し、その変化に対応出来なければ厳しい状況になりそうです。今回は厳しい状況下ではありましたが、それでも予想より多くの方々にお越し頂く事が出来たと思われました。今回お越し頂きました皆様に心より御礼申し上げます。ありがとうございました。