2023年10月25日より27日の3日間の日程でパシフィコ横浜において開催されました 第11回 国際宝飾展 秋 ( 秋のIJT )に出展してまいりました。2023年はここ数年の中でかなり激動の年となっており、振り返れば今年をきっかけに世の中が大きく変わった転換点であったと思わせる状況となっている様に思われます。
コロナ禍の状況で年が始まり世界は感染予防の為隔離の状況が続き、世界は分断され先行きの見えない状況でありました。地球規模の気候変動に伴い自然環境が変化し、人類の生活を支えている動植物が減少している事に加えて、ロシアによるウクライナ侵攻が続き、エネルギーや食料の高騰により人々は不安な状況で、経済も減速している状況でありました。
しかし、2月に入るとコロナの感染状況が落ち着いてきたこともあり、多くの国で渡航制限が解除され世界の往来が始まりました。約3年に渡るコロナによる隔離や規制から開放された人々のムードは一気に改善され、今までのストレスからかコロナ禍以前よりも人々は外出し、多くの世界の都市で賑わいを見せ観光客による爆買いも起こり、インバウンドにより経済もV字回復の様相を見せていました。
実際、春先は我々の業界もそうですが今までの反動から景気が活気付き商取引が旺盛となり、各商材が取り合いとなった事から今までに無い程に高騰していきました。コロナ禍により供給網が完全に復活していない事による商材不足の状況が人々のムードの改善の状況に追いつかず、今後も更に商材の相場は高騰し続け、今のうちに手に入れておかなければという雰囲気であった様に思われました。
ところが、夏頃から雰囲気は一変し停滞ムードに変わりました。二代大国である米中を筆頭に世界の景況感がかなり悪くなって行きました。それに伴い我々の業界も急激に高騰していた商材の多くで相場が急激に下落していきました。春頃より上がり続けると予想して勢いよく高値の商材を抱えた企業は捌くのに苦労していく事となってしまい現在に至ります。
米中の二代大国の戦略的が競争が激化している間に、両国が疲弊し経済が低迷してきています。その間に世界の勢力図が変わりつつある状況となっている様に思われます。インドが人口で中国を抜き世界1位に踊り出て、グローバルサウスと呼ばれる新興国・途上国のリーダーを自任し、9月にはG20首脳会議の議長国を務めました。急速な経済成長も相まって多くの国がインドに投資を始め、インドの世紀に期待が寄せられています。
人口ボーナスにより今後の経済発展のポテンシャルの高いASEAN各国にも注目が集まっています。ASEAN諸国は域内の経済や金融統合を着実に進めており、貿易の円滑化がかなり前進しています。域内におけるモノ、サービス、投資、人の自由な移動により単一市場・生産基地を構築し外資を誘致し、大国に負けない共同体の構築を目指しています。各国共に所得水準が上昇しており、消費市場のさらなる拡大や新興富裕層向けビジネスの勃興が期待されています。
また、日本も久々に脚光を浴びています。海外マネーが日本を見直し始め、日経平均株価は33年振りのバブル期以来の高値をつけました。円安が後押しとなり日本は世界有数の観光大国となっており、インバウンド景気を見込んで外国人投資家は日本の景気の盛り上がりを先取りしてきている様です。実際どこに行っても外国人の姿が見受けられ、交通機関は以前とは全く違い、観光客で溢れかえっています。
日本に世界のマネーが向かい始めた要因は他にもあるようです。日本のAIや半導体の分野に注目が集まっています。ChatGPTの登場により、Googleなどのインターネット検索事業が無価値になる可能性が指摘されており、このAIの分野では日本はかなり進んでいるとされています。半導体においても、最新の半導体の生産には日本の先端半導体製造装置や部品なしには生産が不可能となっています。
光通信と量子コンピュータの分野においても日本は他国よりも圧倒的に進んでいます。6G光通信の開発が2030年にメドが立つと言われており、6Gになると消費電力が現在の100分の1に低減されるため、かなりのインパクトとなりそうです。そして、ロシアのウクライナ侵攻が終わりを告げると、日本はウクライナ復興のための技術を持つ恰好の企業が勢揃いしており、復興特需を享受する事となりそうです。
大きく状況が変化している現在、横浜において開催された今回のジュエリーショーにおいても少し様相が変わりつつありました。出展企業の顔触れを見ても一昔前とは異なり、魅せる企業出展が少なくなり、相場を意識した即売に重きをおく企業、中国を始めとする海外バイヤーをターゲットとする在日外国人が運営する企業が多くを占めるジュエリーショーになっていた様に思われました。
来場者も日本開催のジュエリーショーであるものの、日本の方がかなり少なく、仕入れをするにしてもインフレにより上がり過ぎた商材には対応が難しく、海外相場で対応する海外バイヤーに太刀打ち出来ず、様々な商材を海外バイヤーに持って行かれるといった状況でありました。品質の良い商材、高額な商材が今後日本から消えてしまいそうにも感じる印象を受けました。
その海外バイヤーの動向も少し変わりつつある印象であった様に思われました。海外バイヤーの中心である中国人バイヤーは現在品薄、価格高騰に沸くパールを中心に仕入れをされており、パールパビリオンは中国人バイヤーで賑わいを見せていました。その反面、カラーストーンの製品等では仕入れのポイントがかなり狭まってきている様で、価格、品質が以前よりもかなり厳しくなっていました。
それ以外の海外バイヤーはフィリピンを中心にSNSを駆使したライブコマースで商品販売を行い、以前にも増して活気ある状況であった様に思われました。今回は新たにベトナムなどASEAN諸国の方のライバーの姿も見受けられ、このライブコマースも新たな段階に入って行く気配を感じました。ライバーの方も個人から会社組織に変更される方が多く、ビジネスとして今後も引き続き成り立つと考えられている方が多い様です。
今回のジュエリーショーは日本の方々は少なく、海外バイヤー中心のジュエリーショーとなりました。今年は大きく変化のある年となりました。来年もまた大きな変化のある年となるのでしょう。我々の業界もこれまで業界を牽引してこられた方々の姿が減り、世代交代の時期に差し掛かっています。この時代の転換期と共に我々の業界も変化していくと思われます。時代の波に乗り、弊社も変化を遂げまた来年の1月のジュエリーショーにおきまして皆様とお会いできれば幸いです。今回お越し頂きました方々に心より御礼申し上げます。ありがとうございました。