香港ジュエリー & ジェムフェア ASIA 2023

期間
2023/06/22〜2023/06/25
会場
香港コンベンション & エキシビションセンター
ブース
1A420
展示会情報

 2023年6月22日より25日の4日間の日程でHong Kong Convention & Exhibition Centreにおいて開催されました Jewellery & Gem ASIA Hong Kongに出展してまいりました。

   コロナ禍前後で社会、そして経済は全く異なり、今の世界は50年に一度とも言うべき大きな転換点に差し掛かっています。

 低インフレ・低金利の時代が終わり、いよいよ本格的なインフレ時代を迎えようとしています。1970年代から1980年に経験して以来の大インフレ時代を迎える事になるかもしれません。しかも今回のインフレは以前とは異なり、高度成長期に生じたインフレの様に、企業がどんどん儲かり、人口増加により経済が拡大していく中でのインフレではなく、人口減少により経済が縮小していく中でのインフレとなる恐れがありそうです。

 今回のインフレの大きな問題は単なる需要超過により引き起こされているものではなく、様々な要因が重なった事によるインフレ進行となっています。最大の要因は量的金融緩和であると言われています。新型コロナウィルスのパンデミックに対して世界中で経済活動を止め、物凄い勢いでマネーサプライ( 通貨供給量 )増やしました。この事でマネーの量があまりにも多くなってしまいインフレ進行の要因となってしまいました。

 また中国の台頭により世界の構図が大きく変貌しています。中国は世界の工場から世界一の消費マーケットに変貌を遂げました。新冷戦の構図や政治的なリスクも考慮し、世界の工場であった中国から多くの国が工場を撤退させる動きが広まっています。中国を外してモノを製造すれば、モノの価格は上がらざるを得ない状況もインフレ進行の要因となっています。

 ロシアとウクライナ戦争の問題もインフレ進行の要因となっています。ロシアは世界でも最大の資源国の一国です。欧州各国はロシアからパイプラインを通じて天然ガスを輸入していました。パラジウムの生産の4割がロシアで、半導体製造のレーザー光源に用いられるネオンの生産の7割がウクライナです。同じ用途のクリプトンはロシアとウクライナの合計で生産の8割を占めています。戦争が終結するか、代替物が出ない限りこれらの希少資源の値段は高騰し続ける事となりそうです。

  インフレは今後多くの産業の構造を変える要因となりそうです。我々の業界の商材においても殆どの商材で相場が変わってしまいました。その商材の相場と以前より行われている販売のスタイルとのミスマッチが起こり始めています。販売の現場に数年前からある商材は現在の輸入、製造価格よりも安いモノもありユーザーが購入する代わりに、輸入卸業者が購入するという近年では考えられなかった状況も見受けられます。

 以前の相場の商材が現場で販売に至らない状況では、今後、現在の相場での商材の仕入れも厳しく、新しい商材が無ければ客離れや売上げ減少という悪循環に陥ることも考えられます。過去30年のデフレ時代がいよいよ終わり、インフレの時代に突入した事により我々の業界の産業構造も変化しつつあり、また変化が無ければ今後残る事は厳しいと思われます。現在はトレンドが大転換に差し掛かっているタイミングと言っても過言ではないのでしょう。

 この様な状況下で開催された香港ジュエリーショーは多くの出展社の期待を裏切る形となりました。3月開催のジュエリーはバブルの様な賑わいを見せ、3ヶ月後の今回の6月開催のショーも同じ様に賑わいを見せるショーとなる事を想定されていた方が殆どの様でしたが、今回のショーは過去に例を見ない程に来場者が少なく、閑散とした雰囲気でスタートしました。

 要因はいくつかある様です。今回香港で開催されたジュエリーショーと全く同時期の6月22日から25日の日程で中国上海において、上海国際珠宝首飾展覧会が開催されていました。この上海でのジュエリーショーにはこれまで香港ジュエリーショーのメインバイヤーとして来場されていた方が多く出展されていた様で、今回の香港ショーにはお見えになられなかった事が要因の一つとしてある様です。

 そして、4月1日より香港において宝飾品の商取引の規制が始まった事も要因の一つであった様です。HKドル120,000-以上の現金取引きが行われる際、購入者の名前、ID等を聞き出し電子申告する事が義務付けられており、この事に嫌気を感じる方は購入を控えられる状況でありました。今まで香港において、日本企業を含む香港以外の国の出展企業からの取引は現金取引が多く、今後も影響を及ぼしそうです。

 また、現在のインフレ進行も今回の要因の一つとなっていました。現在では商材の値段が上がり続けています。3月の香港ショー、5月の神戸のショーで大いに仕入れをされた方はまだ日がそれほど経っておらず、購入された商材をさばき切れていない状況の様です。その状況の中、更に高騰している商材を購入するのを躊躇われている印象でした。今まさにバブルとも言える状況のパールでさえ高過ぎると購入を控える方も見受けられ始めた様です。

 今回のジュエリーショーの状況を感じ、今後の商材の相場が下がるのではと言う声が多く聞かれました。実際売上げを大きく落とす出展企業が多かった様で相場の下落も考えられます。しかし、本格的なインフレ時代に突入している現在においてモノの値段が下がる事は考え難く、スタグフレーションの状態に突入する予兆なのかもしれません。我々の業界も大きく変わり、今後の動向に対応する事は今まで以上に難しくなるのでしょう。

 3年振りの6月の香港ショーは今後の業界にとって大きな転換点となる指針となった様に思われました。今後の課題に取り組みまた9月開催の香港開催のジュエリーショーにおきまして皆様とお会いできればと考えます。今回厳しい状況下にも関わらずお越し頂きました皆様に感謝致します。ありがとうございました。